Photo by Akinori Gomi

ヤシンタ ヒン


ヤシンタ ヒンはオランダで生まれ、1989年から現在まで日本在住。ヒューマンリソースやパーソナルコーチングとして指導する他、embrace-transition.comの創始者でもある。

翻訳者: 有賀 玲子

2015年8月30日正午、東京。私と友人は国会正門近くの希望のエリア* にたどり着いた。この日は、日本政府が国会を通そうと試みている安保法案に反対する大きな抗議デモのある日だ。多くの人々が集まる事が予想されている。だが、雨が降ってきた。十分な人数が集まるだろうか、と不安になる。

デモはまだ始まっていない。過去に参加した経験から、間近で見たければ早めに来なければならない事は分かっていた。

周りを見回してみた。どれくらいの人々がすでに集まっているのだろうか。数千人程度?警察が人々を歩道へ押しやり、できるだけ一塊に集まらないように規制しているので判断が付かない。誰かがマイクで、国会近くの公園へと広がっていくよう促しているが、それが主催者の声なのか警察の声だか分からない。

若い子が大きな抗議サインを渡してくれた。ボランティアを探していたようだ。そのサインには、`平和を試すチャンスを!′と書かれてあった。私はその抗議文に心から賛同し、サインを掴んだ。

高校生らしき学生達が近くに集まり、歌い始めた。若い子達の声は無邪気で耳に心地よく響く。彼らが武力紛争に駆り立てられるなんて事は絶対に許せない。

ピースマスク・プロジェクトのメンバー、キャ・キムさんの言葉が私の心の中で響いていた。´今の若い人達はこれまでにないほど全世界への理解を深めている。私達はいかにお互いが繋がり合い、共存し合っているかという認識をどんどん深めつつある。私達は他文化に存在する美を認め、自らの文化を表現する事により、成長し変化していくのだ。このような現実が私達の未来、そしてこれからの社会で反映されていかなければならない。意見の分かれた激しい論争はもはや戦争を意味するのではない。それよりもむしろ、成長するために与えられた機会であり、平和を築き上げるための動機なのだ。。。’

気づくと、写真機やビデオカメラを抱えた人々が集まり始めていた。マスメディアが来たのだ!やった!もっと頑張らなければ。

私が立っていたところはすでに混雑しすぎていて身動きが取れない。初老の女性が空いているところを探していたので、スペースを作ってあげた。フェイスブックに抗議サインを持った自分の写真を投稿するや否や次々にいいね!が来た。良かった。皆、ちゃんと関心を持ってくれているのだ。

1時ぴったりにドラムが鳴り出し、抗議が始まった。私は抗議サインを高く掲げ、何千人もの人々と共に声を上げる自分を誇らしく感じた。あまりにも多くの人が集まったため、すぐにフェンスが崩れ、警察は人々を解放してやらなけれなならなかった。私達は国会前の大きな通り全体に広がっていき、ものすごく大きな一塊の群衆となった。こんな事態でも、慌てる人もなく暴力も起こらない。私達はこの一面に広がった人々の一部である。このように自然に統制が取れている様子の人々を見るのは実に美しいものである。私と友人は思い切って群衆の中に入り込み、抗議デモのリーダー達のいる正面口までさらに人をかき分けていった。そこでは、ミュージシャンの坂本龍一と主要メンバーがスピーチをしていた。

1人の男性が私の肩を叩いて、`ここへきてくれてありがとう´と慣れない英語で言ってくれた。`勿論よ’ と私は返した。´日本は私の国。私は世界の一市民。これは日本国内だけの問題ではない。日本を国外の戦争に参加する事を禁じ、日本を守る行為のみ許す事を規定した憲法9条は平和の象徴。9条は日本国民のための法律であり、政府のための法律ではない。9条は世界が受け継ぐべき遺産であり、私が考えうる限り、他国もこれを採択するように鼓舞する力があると思う。’

私はデモと人々の連帯の力を信じているからここにきている。私は脱原発デモの常連だ。もうすでに3年以上も日本で続いている毎週金曜日の原発再稼働反対デモにも来ている。初めから抗議をすることには大切な意義があると分かっていた。日本の人々はここに来て、常に平和なやり方で、お互いにつながりあい、励ましあい、声を共に上げながら、現実を変えていくことができると学んでいるのだ。

日本はすっかり変わりつつある。政府による憲法9条の解釈改憲の成功・失敗をよそに、憲法学者たちはこの解釈改憲を違憲であると述べ、日本国民は政府のやり方にはついていかない、と考えを改め、政治に対して恥ずかしがらず、オープンに自分たちがどのように感じているのか意見を言うようになった。人々は抗議の仕方を覚え、少し前までタブーであると思われていた政治の話題を話し合うようになった。かつて政治や社会問題に興味がないと思われていた10代後半から20代前半の若者たちは、自分たちで政治団体を作った。`民主主義のための学生たちの緊急行動´SEALDs シールズ である。今、平和のために抗議をしているグループの中で先頭を切ってリードしているこの学生達は、民主主義という言葉に新たな息吹を吹き込み、自分たちの声を聞いてほしいと要求している。彼らのマニフェストは深淵で、彼らの行動には勇気を奮い立たせられる。シールズについては、日本語または英語のウェブサイトを見てほしい。突然、どこからともなく現れたシールズは、時代に逆行しつつある日本政府に反対するムーブメントをかつてない程盛り上げている。

3時間抗議を続け、私の声は枯れた。私達は、途切れることなく、`憲法守れ′`戦争反対′`民主主義って何だ′`安部やめろ′などのスローガンを叫び続けていた。これらの言葉は叫ぶうちに、心が覚醒していくようなマントラになる。もっと長い時間、他の抗議者たちと叫び続けることだって私にはできる。

今日のような一日を過ごすと希望が湧いてくる。

その後、東京の抗議デモには12万人が参加し、それと同時に、地方には200以上の抗議デモがあった事が分かった。
この平和のための抗議デモにはいろいろな形で参加することができる。例えば、この署名にサインをしてデモへの連帯を示してくれても良い。または、今日の民主主義がどうなっているのか自ら参加し確認するのも良い。過去何週間か、シールズは毎週金曜日夜7時半から9時半まで国会前でデモを行っており、これは暫く続くようである。

**希望のエリアは、毎週金曜日の原発再稼働デモの参加者らにより名づけられた。